Who are you? ~どんな内容?
実写でやるなら主演は誰がいいかってのを、ネットで意見出し合って遊んでいたの。そしたらある人がニコラス・ケイジって言ったんだよ(笑)。(中略)でも俺、ナイスアイディア!と思ったの。(中略)たとえば焼き肉屋で「うおォン」とか言っているところとか、口に出すと変になっちゃうんだけど、ニコラス・ケイジが「ワオゥ」とか言って、字幕で「うおォン」って(笑)そうすれば、ちゃんと五郎ちゃん節が守られて、それでいてハードボイルドになるんじゃないかっていう。久住昌之
引用:「孤独のグルメ【新装版】」(p205)
五郎さんが
ニコラス・ケイジ!


松重豊氏に決めたのは
プロデューサー
俺が食べているメシを誰にも邪魔されたくないと全身で表現できるハードボイルドな人。そう考えている時に映画、テレビ、舞台で活躍されていた松重さんの演技を見て、この人しかいないと思っていたのです。
引用:ドラマ「孤独のグルメ」Pが語る 松重豊を五郎役に決めたワケ|日刊ゲンダイDIGITAL
確かに孤独のグルメといえば松重氏の五郎。しかし…

わんちゃら!は徹底的にマンガ版を推しに推します!
ということで。
35、36冊目はこちら!「孤独のグルメ」(扶桑社、2008年4月22日発売)さらに「孤独のグルメ2」(扶桑社、2015年9月27日発売)でございます!全話、1話読み切りで8ページ。
原作は久住昌之氏。東京都三鷹市出身。法政大学社会学部卒業。メガネと帽子がおしゃれ。マンガ原作者でありながらご本人もマンガ家でありエッセイストでありミュージシャンでもある。「中学生日記」で第45回文藝春秋漫画賞、「大根はエライ」で第24回日本絵本賞受賞。
漫画は谷口ジロー氏。鳥取県鳥取市出身。鳥取商業高校を卒業後、マンガ家の夢を諦められず1966年に上京。「犬を飼う」で第37回小学館漫画賞審査員特別賞。「『坊っちゃん』の時代」で第12回日本漫画家協会賞優秀賞。2011年フランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」受賞。2017年2月11日、多臓器心不全でお亡くなりになります。満69歳でした。
鳥取はマンガ家大国。水木しげる氏、青山剛昌氏、そして谷口ジロー氏!

改めてどういう内容なの?
最初に担当者に言われたのは「ハードボイルドグルメです」って。何のことやらよく分からないけど(笑)、「カッコよく、最後はちょっとキメてくれ」みたいなね、そういう感じだったので。谷口ジロー
引用:「孤独のグルメ【新装版】」(p198)
ハードボイルドとはもともと卵を固く茹でたことを意味する言葉でした。そこから非情、感傷に左右されない、客観的な人間の態度を表すようになります。さらに、第一次世界大戦後(1918年11月11日ドイツ降伏)アメリカ文学に登場した、現実を簡潔に表現する文法のことも指すようになりました。

つまり五郎ちゃんは冷酷無比で血が通ってなくて平気で人を○せる人ってことねアータ
ハードボイルドじゃなくて
アウトレイジだろそれは

「月刊PANjA」の1994年10月号から毎月掲載され、1996年6月号までの全18話(ただ17話から18話まで3か月間隔があく)。雑誌の休刊に伴い連載が終了しますが、その後「特別編」として2008年1月15日号の「週刊SPA!」で奇跡の復活!旧版の単行本の発売が1997年なのでちょうど10年ぶりの新作でした。「孤独のグルメ【新装版】」は、この珠玉の1本を含め収録。
1996年連載終了時までの作品(1話 – 18話)をまとめた単行本が出版されている。当初は3刷で絶版になるなど、けっしてヒット作とは言えなかった。2000年になり文庫版が出版されてから年2回の増刷がかかるようになり、その実績から2008年に新装版が発売されている。
引用:孤独のグルメ – Wikipedia
ちなみにドラマ シーズン1は2012年1月5日から3月22日まで放送。
文庫版で五郎さんを「見つけた」方々が一定数いらっしゃるわけですね

そうなんです。ドラマで火が付いたのは間違いありませんが、マンガそのものでもじわりと支持層を増やしていたわけです。
新装版は巻末に原作者の久住昌之氏と作画者の谷口ジロー氏、小説家の川上弘美氏による特別鼎談。ちなみに鼎談とは3人が向かい合って話すことをいいます。一方、2人の場合は対談。この鼎談が良かった。冒頭の五郎役は誰がいい、ですとか、ハードボイルドグルメ誕生秘話など。ここではこの鼎談を検証しつつ久住氏と谷口氏の言葉を紹介しながら孤独のグルメを書評します。
「孤独のグルメ2」は「週刊SPA!」2009年6月9日号から2015年5月19日号までの全13話。この「孤独のグルメ2」すごいんです。いや、この一冊にまとめるとさらりと読めますが…
第1話の静岡市青葉横丁の汁おでんから、第2話の新宿区信濃町のペルー料理(2010年3月9日号)まで何と9か月、間が空いてます。第3話の品川区東大井の冷やし中華とラーメンは2010年10月5日号。7か月後の掲載です。ここで全13話の掲載間隔をまとめます。
第1話 静岡市青葉横丁の汁おでん
2009年6月9日
第2話 新宿区信濃町のペルー料理
2010年3月9日
第3話 品川区東大井の冷やし中華とラーメン 2010年10月5日
第4話 三鷹市下連雀のお茶漬けの味
2011年7月5.12日合併号
第5話 世田谷区下北沢路地裏のピザ
2011年11月22.29日合併号
第6話 鳥取市鳥取市役所のスラーメン
2012年5月15日号
第7話 世田谷区駒沢公園の煮込み定食
2012年12月25日号
第8話 文京区東京大学の赤門とエコノミー 2013年8月27日号
第9話 千代田区有楽町ガード下の韓国料理 2014年6月10日号
第10話 渋谷区松濤のブリ照り焼き定食
2014年6月17日号
第11話 千代田区大手町のとんこつラーメンライス 2015年1月13日号
第12話 荒川区日暮里繊維街のハンバーグステーキ 2015年2月14日号
第13話 フランス・パリのアルジェリア料理 2015年5月19日号
週刊漫画誌世代からすると、絶望感を抱く掲載間隔。よく当時の孤独のグルメファンは我慢して待っていたなと思います。漫画の題材は大衆食堂のメニューですが、漫画自体は幻の食材レベルです。
第6話の鳥取市役所のスラーメン。これ絶対、編集者サイドの谷口氏リスペクトによる「企画もの」ですよね。

それにしてもこの掲載間隔
すごいね
これリアルに見ていた方は 新作を見るたびにどういう想いで読んでいたんでしょうね


ハンターの休載期間は
最長約3年11か月

漫画好きって間違いなく
マゾねアータ
巻末はエッセイストの平松洋子氏による解説「上等な孤独について」。これがまたいい。たぶんこの解説こそ久住氏谷口氏が作り出した、井之頭五郎のハードボイルドを完全に分析しています。この解説には「好きなものを、好きなときに、好きなように味わうために大事なのはただひとつ、何にも縛られないこと」(孤独のグルメ2 p139)とありますが、これがまさに…
モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず自由で なんというか救われてなきゃあダメなんだ
引用:「孤独のグルメ2」(背表紙 帯
本書より)

ちょっと待って

このセリフ 孤独のグルメ2をくまなく探したけどどこにもない…
そうなんです。これは孤独のグルメ2には収録されていない、一巻目の第12話、板橋区大山町のハンバーグランチの五郎さんのセリフなんです。孤独のグルメ2を本書、とすると載っていない。
確かにこのセリフこそ孤独のグルメそのものですけどね


編集の人 五郎ちゃん愛がまだ足らないようねアータ
やめろ

I like you! ~紹介する理由
ここでは4つのポイントに分けて紹介させて頂きます。
其の1 職人・谷口ジロー氏
「孤独のグルメ【新装版】」(1巻目です)の特別鼎談において、原作者の久住氏が、1話目の2ページ目の一コマ”いろは会ショップメイト”について「ひとコマ描くのでも、すごく大変ですよね。一日かかるんじゃないですか」と作画者の谷口氏に質問されます。すると谷口氏は…
ひとコマ1日は普通ですよ。
引用:「孤独のグルメ【新装版】」(p198)
久住氏は本作では原作者ですが、実際漫画も描かれます。その同業者から見ても…
すごいですよね、これ、模写しようとすると、気が遠くなる。スクリーントーンを貼って削って、その上にまた貼って削って…
引用:「孤独のグルメ【新装版】」(p198)
また久住氏によると、谷口氏は久住氏の文章と写真による原作を忠実に、一言一句を全部マンガにしているとのこと。まさに久住氏の孤独のグルメの世界観を忠実に「見える化」しているのです。
細部にも気を抜かない。まさに芸術作品それが「孤独のグルメ」なのです。
谷口氏がお亡くなりになった、そのしばらく後に久住氏は…
「絵を描く人がもう旅立ってしまった」
引用:孤独のグルメ – Wikipedia
「3巻が出ることはありません」
井之頭五郎を、孤独のグルメをどう描いていこうか。そんなふうに考え、ともに歩まれてきたお二人。久住氏の頭の中を、その繊細なタッチで世に送り出してきた谷口氏。
そうですよね。代わりの方なんていないですよね。
唯一無二の輝き。それが谷口ジロー氏の井之頭五郎。もう二度と見ることができない博物館展示レベルの芸術作品。ぜひお手に取ってご鑑賞ください。
其の2 井之頭五郎というキャラ
わかってないからね、書いているほうも。井之頭のキャラだって、最初にカッチリ決めていたのは、酒が飲めないってことぐらいで。
引用:「孤独のグルメ【新装版】」(p201)
このあと、飲むと自分になってしまう、と久住氏は続けています。また谷口氏は、飲むとよくあるパターンになっちゃうかなとおっしゃっています。

よくあるパターンってなんなんだろう?
これは個人的考察ですが、お酒って飲むとどうでもよくなっちゃうんですよ。ふわふわして、気分良くて。だから酒飲みの「うまい!」は信用できない。だって、きゅうりを塩もみして切って出しただけでも「うまいなあ、このきゅうり!」とか言いますから。うまいの大安売り。うまいの価格破壊というわけで。

この手の酒飲みが一番いい酒飲みなんですけどね
ただしこれではドラマにならない。このあと川上弘美氏が「ハードボイルドじゃなくなっちゃう?」と久住氏、谷口氏に問うと、
そうだね。お酒が飲めない人っていうので、ある種のストイックさが出たのかも。
引用:「孤独のグルメ【新装版】」(p201)
お酒というフィルターを通して料理を、つまみという脇役チックな捉え方してしまう、そんな危険性を排除し、素面で料理をたった一人でガチンコ採点していくスタイル。それこそ五郎のスタンスなのでしょう。そう、かれは孤高であり、崇高であり最高なのですが、それ故に孤独なのです。
他に大の甘党。父親は既に他界。母親は詳細不明。二歳上に離婚歴のある姉がいる。姉の子ども、甥っ子の太は高校球児。育ての親が古武術の館長で高校くらいまで毎晩しごかれていた等々の設定。
作中、二度古武術の腕を披露(板橋区大山町のハンバーグステーキ、三鷹市下連雀のお茶漬けの味)。下連雀はアルハラの現場を見て耐えられなくなってその上司に注意し、大山町は食事中に店長がアルバイトの呉さん(中国人?)を叱り続けている姿を見て苦情を言い、その流れでアームロック。

実は…
以前お世話になった職場の精神科医から聞いた話ですが、依存症患者は若い頃コンタクト系のスポーツ(ラグビー、柔道、レスリング、空手など)をやっていた方が多く、中途半端が好きではなく、やるならばトコトンやらないと気が済まない、という性格の方が多いと聞いたことがあります。
ストイックさは古武術から来ているのかも


五郎ちゃんが飲めたら依存症間違いなしねアータ
孤独のグルメ2になるとキツイおやじギャグを連発(これは作品上、全て独り言)、読者サービスでシャワーを浴び(バックショット)、唐突に一句読むニュー五郎に変身。食後の喫煙姿は第5話の下北沢路地裏のピザ以降無し。
バックショットは関係ないでしょ

寡黙だが雄弁。こだわりが強く、我が道を行く。そんな五郎のキャラがなければ孤独のグルメは成り立たない。マンガ版、まだ読んだことが無いんだよな、という方、ぜひ松重豊氏の五郎と比較して楽しんでみてはいかがですか。
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