Help me! ~いやあ。しんどいなあ
職場で「負け組」と感じてしまい、自分の存在価値に疑問を持っています。どうやって心のバランスを保てばいいの?
こんな生き方もあります

Non-fiction ~だからこの本は面白い

ヒィィィィッキシ?
それ加トちゃんのくしゃみ

ノンフィクション。それは実際の出来事を題材にした作品のこと。ただし、視点を変えると見え方が変わるように、解釈が何通りも出来る。
逆に言うと今まで事実だったこと、いや、事実だと思って信じていたことが「揺らぐ」。期せずしてそんな状況にも遭遇する。
ノンフィクションは真実だけど
少し残酷だ。
誰にとって残酷なのか答えはこのあと!

Who are you? ~どんな内容?
67冊目は『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社、2011年9月30日発売)でございます。
著者は増田俊也氏。1965年11月8日愛知県生まれ。北海道大学水産学部中退。新聞記者の傍ら執筆された『シャトゥーン ヒグマの森』で第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞!
この作品は『ゴング格闘技』紙上で、2008年(平成20年)1月号から2011年(平成23年)7月号にかけて長期連載されたものです(あとがきより)。
この作品は第11回新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション大賞とダブル受賞!
増田氏の驚異的な筆力による描写、確かな取材力、最終的に中立的な立場を意識して書かれたバランス感覚から生み出された傑作!これぞノンフィクション!

701ページ!
過去最厚!
15年不敗、13年連続日本一、天覧試合制覇。日本柔道史上「最強」の男が背負った哀しき人生ーー
引用:『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(表紙帯裏)
作中に登場する人物は全て、格闘技の神ばかり。

神?ならば敬称略!
そうです。神は敬称略!それがこの世界のルール。ということで木村政彦、力道山、大山倍達…敬称略とさせて頂きます。
いつから世界のルールになったんだ


それよりタイトルが物騒ね
アータ
さて本書ですが…
めちゃくちゃ簡潔に言うと、とてつもなく柔道が強い木村政彦が、人生はそれだけじゃダメで、ハワイやブラジルへ行って、いつのまにかプロレスに順応して、でもそれだけじゃ食べていけなくて、奥さんの薬代が必要で、いつのまにかうまくいかなくなって、じゃあどうすればよかったんだろう、いっそのことああしてやろうかいや、それはやめよう、ああ、と苦しまれ。

ええ…何この内容
でも最終的に「これでよかったよね……」と人生を振り返られる。そんな木村政彦の人生を描いた作品です。
雑っ!

1954.12.12 ~15分49秒の人生
朝日の記事をよく読んでほしい。≪朝日新聞岐阜支局で力道山との間に全日本選手権を争いたいと声明した≫とある。取材に記者が宿舎を訪れたわけではなく、木村が自分で支局に来たことになる。
引用:『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(P532 )

力道山VS.木村政彦。1954.12.12蔵前国技館。昭和の巌流島決戦。
着火点は木村政彦。そうさせたのは力道山。しかしそこまでの過程を読むと、木村政彦の生き方。ここが起因ではないか。
改めて力道山の人間としての総合力に震えます。

猪狩完至の100倍すごいっす
15分49秒、ドクターストップ。
僕の一番好きなことは「勝つ」といふことです。一番嫌いなのは「負ける」ことです。牛島先生からは「心」の修養といふことについて深いものを教えて頂き柔道の道を通じて師と弟子の「心」の結び付きを持ち續けることが出来たのは私に取つて一番幸福なことだと現在でも思つております。
引用:『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(p1)(木村政彦の言葉。昭和25年のプロ柔道パンフレットより=以下、参考文献からの引用箇所は原文のまま)

この日を境に力道山は日本プロレス界の父になり、そして木村政彦は静かに、淡々と生きることになります。
TATUJIN ~とっくの昔に義眼じゃよ
はい注目!そこのあなた!
もしかして刃牙ファンじゃありません?

ならば絶対読んで!
ジャイアント馬場の葉巻を持つ指先が小刻みに揺れ、植芝盛平が小指を突き出し「折ってみなさい」と言い、塩田剛三が木村政彦と腕相撲をやって圧勝し、大山倍達が「おい力道!俺がこの場で挑戦する!」と叫ぶ。
まんま刃牙だな

現代格闘技の黎明期。伝説の武人が次々と登場します。で、この作品はノンフィクション。彼らがどう木村政彦に絡み、力道山と交錯したのか。

それではわんちゃら的見どころです!
I like you! ~紹介する理由
この長く濃い、しかしあっという間に読み終えてしまった『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』ですが、読後、ある事実を読み手は知ることになります。
それは、作者である増田俊也氏がなぜこれを書いたのか。
増田氏はご自身も寝技中心の七帝柔道経験者で、木村政彦の全盛期の実績を、通常の読者以上に肌身に感じた。

この本の面白いところは、柔道サイドで読むか、プロレスサイドで読むか。印象ががらりと変わる。
増田氏は本書を書くことで木村氏の汚名を晴らそうとされた。そう、はっきり柔道サイドの視点です。しかし私ははっきりいって読み進めれば読み進めるほど、力道山、怪物だなと、プロレスやっぱりすごいな、と感心しました。

さあ、あなたはどちら派でしょうか?
Present for you💐 ~揺さぶるフレーズ
堕ちよ、と言った。
坂口安吾である。
引用:『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(P307 )
生きる。木村政彦は生きるためなら何でもやった。自然体。聞こえはいい。堕落。だらしがない感じがする。でも結局それは表裏一体であり、どちらも木村政彦だった。
鬼の木村。木村の前に木村なく、木村の後に木村なし。そう、たしかに木村は木村政彦であり、木村政彦でしかなかった。
木村政彦は、あの日、負けたのだ。
もう一度書く。
木村政彦は負けたのだ。
引用:『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(P582 )
増田俊也氏もここの箇所を書かれるにあたり様々な思いが去来されたと思われます。そして力道山の人間力。そのすさまじさを書かれるごとに「木村幻想」の揺らぎを覚えた。
増田さんにとって残酷だった事実ではないでしょうか

木村政彦は堕ちて堕ちて堕ち続けた。
その結果、この事実を受け入れた。
木村政彦は、あの日、負けたのだ。
だから木村政彦は力道山を殺さなかったのだと思う。
Thank you! ~55秒解決!
今回の【55秒解決】
逃げずに苦しみや痛みを受け入れることが、自己成長と人間的な深みをもたらすと知った。

挫折や苦難も それも人生
コメント